シグマ株式会社 代表取締役 下中 利孝
自動車などの部品製造から製品企画、
セキュリティーやレーザー傷検査システムの
開発まで手掛けるシグマ株式会社。
創業3代目となる下中社長の
仕事へのパワーの源泉を前田社長が探る。
セキュリティーやレーザー傷検査システムの
開発まで手掛けるシグマ株式会社。
創業3代目となる下中社長の
仕事へのパワーの源泉を前田社長が探る。
独自の技術で生み出す部品が
大きな世界シェアを誇る
大きな世界シェアを誇る
前田
下中社長とはいつも経営者の集まりでご一緒させていただいていますが、今日は一対一で深いお話しをうかがえればと思っております。シグマ株式会社はどんなことをなさっている会社か、本誌読者の方にご紹介いただけますでしょうか。
下中
はい、弊社の事業には大きく3つの柱があります。メインになるのは、自動車などの精密部品の製造です。弊社の主要な技術である成型技術には、例えば「冷間鍛造(れいかんたんぞう)」といって、常温で金属を切断し、叩いて成型していくものがあります。その他、射出成型というプラスチックなどの成型技術もあります。そういった高い成型技術を生かした部品を提案し、採用していただいています。
前田
精密部品の受注生産だけでなく、自社で企画提案をされるのですね。御社は経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」に選ばれていらっしゃいますね。
下中
はい、その選定には製品が世界シェア10%以上という規定があります。弊社の一部部品が世界の14〜17%で採用されているのです。
前田
それはすごい! 高い技術力、企画力のたまものですね。
下中
りがとうございます。部品事業という大きな柱の次に、ストアセキュリティーシステムの開発と販売事業があります。量販店などの出入り口に設置される防犯ゲートや、商品に取り付ける防犯タグ、それを活用するシステムです。その他に防犯カメラなども開発製造しています。
前田
防犯ゲートは家電店や衣類量販店などで見たことがあります。本誌の読者の皆さんもご覧になったことがあるでしょう。
下中
ええ、店頭の商品に付いているタグを見てください。「シグマ」と書いてありますから。そして最後に、弊社では一番新しい事業の「レーザー傷検査システム」があります。非破壊・非接触で製造中の部品に傷や欠けなどがないかの検査ができます。元々は自社の製品検査を目視で行っていたころ、時間やコストがかかるとか、検査する人の技能の影響を受けやすいという課題があり、その解決のために開発したものです。検査品質の安定が評価され、今ではAIも取り入れて、より精度が向上しています。
3代目社長に就任、そして
ビジネスモデルの変革へ
ビジネスモデルの変革へ
前田
御社は戦前に呉で創業なさったそうですね。御社の歴史についてお聞かせください。
下中
創業は昭和12(1937)年、祖父が呉海軍工廠(こうしょう)関連の部品製造から事業を始めました。戦後は自動車メーカーの指定工場として部品加工を行っていました。
前田
年の長い歴史をお持ちですね。戦前の海軍工廠関連の技術を生かして戦後は自動車部品にシフトされたんですね。
下中
はい、技術力はあったのですが、1社受注のいわゆる下請け賃加工でした。1989年、33歳で私が父の後を継ぎ社長に就任したときには、まだ企業としてのオリジナリティーが育っていませんでした。
前田
それを今のような提案型のビジネスに、どのように変えていかれたのでしょうか。
下中
まず、部品という製品を商品にすることが必要だと考えました。独自の技術が評価されて採用されるのですから、製品のどこかに他にはないメリットがあるはず。それを最大限に引き出すのです。技術を元に企画を立て、製造設備も含めた開発を行います。企画力とは製品を商品にするための高い技術力と強い営業力から成り立ちます。
前田
なるほど、考え方次第で製品が商品になる。それによって、これだけの高い世界シェアを取れるようになったのですね。私たちも住まいを“つくる”仕事です。製造業の視点を取り入れたいと常々考えています。
下中
製造業に必要なものは「粘り強さ」だと思います。やり始めたらやめない。「やり続ける」ということを大切にしています。「10年続けないと変わらない。20年で伝説となる。力一杯やり続けて、30年で恐るべし」という言葉が好きです。
前田
すばらしいですね! 私どもの「くらうど」も今年で20年になります。最初は手書きで輪転機印刷でした。これからも力一杯続けていきたいですね。
複合型、創造型を経て
人を育てる人型未来企業へ
人を育てる人型未来企業へ
前田
ところで、セキュリティーシステムというのは部品とはかなり離れているように思いますが、どういった経緯で開発に至ったのでしょうか?
下中
情熱だけですよ(笑)。とにかくオリジナル商品を作りたかった。普通の発想とセオリーが全く逆で、コンサルさんから怒られちゃいましたよ(笑)。
前田
しかしそれが実を結び、今やたくさんの施設で採用されています。社長のそのエネルギーの源はどこにあるのでしょう?
下中
全ては問題解決志向です。こうなりたいという目標が定まれば、現状とのギャップを埋めるための対策を立てて実行するのみです。
前田
社員教育にも力を入れていらっしゃるそうですね。
下中
はい、人型未来企業を理念に、一人一人が立派な社会人として熟練度を上げていけるような体系づくりを進めています。階層別教育、技術別教育を実施しています。「三位一体教育」として、向上心を持って走る本人、サポートする上司、それをバックアップして支える会社が一緒になって進めています。
前田
ユニークなところでは「人生カレンダー」を作られたそうですね。
下中
会社でがんばってもらうためには、人生をどう生きるのか考えてもらうきっかけづくりにとの思いで、希望者に渡しています。人生の計画をシミュレーションして書き込めるようになっています。
前田
最後に、住まいについてのお考えをお聞かせください。
下中
人生で住まいのあり方は大きく3回変わります。若いころは都市部に。結婚して子育て中は郊外に。そして子どもが巣立った後はまた都心に戻って、趣味を楽しむ。だからこそリフォームが必要になるんでしょうね。
前田
ありがとうございます。今日は社長のパワーの一端に触れる対談でした。貴重なお話をありがとうございました。
シグマ株式会社
下中 利孝
1956年生まれ。明治大学卒業後、1979年入社。1989年33歳で社長就任。マリンスポーツと料理が趣味。