株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリー 代表取締役社長 白井 浩一郎
広島から世界へ。瀬戸内の風土を生かした
ウイスキーやジンでグローバルに展開する
株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリー。
サクラオのウイスキーを愛飲する小誌発行人・前田社長が、
製品のファンとして、そして同じ経営者として、熱く語り合った。
ウイスキーやジンでグローバルに展開する
株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリー。
サクラオのウイスキーを愛飲する小誌発行人・前田社長が、
製品のファンとして、そして同じ経営者として、熱く語り合った。
パイオニア精神を根本に据え
新しいことに積極的に取り組む
新しいことに積極的に取り組む
前田
今日はここ広島の地でジンやウイスキーを造っておられる株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリーさんにおじゃましております。白井社長、よろしくお願いいたします。
白井
お越しいただいてありがとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします。
前田
今、まさに目の前のガラス越しに大きな蒸留器を見上げながらの対談ですが、光り輝いて芸術作品のようですね。
白井
この蒸留器は銅製で、ドイツのメーカーに特注で作ってもらいました。本日蒸留しているのはモルトウイスキーです。弊社は2021年に念願のシングルモルトウイスキーを発売しました。
前田
それはすごい。私も家ではサクラオさんのジンをいただいています。従来は洋酒よりも焼酎や日本酒のイメージがありました。
白井
弊社の社是は「チャレンジ」そして「地のものを生かす」。伝統を生かしながら新しいことに積極的に取り組むというのは弊社の基礎をなす気風です。私が社長に就任した13年前は、弊社の全製品の半分以上を焼酎が占めていました。その頃、まだ日本ではウイスキーブームは起こっていませんでしたが、海外ではジャパニーズウイスキーが評価され始めていたのです。フランスの酒販業者が弊社のブレンデッドウイス酒販業者が弊社のブレンデッドウイスキー「戸河内」を扱いたいと訪ねて来たりしました。
前田
「戸河内」は私も大好きです(笑)。世界初の紙パック容器の日本酒を発売されたのも御社ですね。
白井
はい、1967年に「はこさけ一代」を世に出しました。1918年の創業当時は焼酎蔵で、日本酒の製造免許を取得したのが1963年。業界では後発だったので、その中で食い込もうと挑戦しました。
前田
聞くところでは、清酒の消費量は下がっているそうですね。その中でも「弥山」など非常においしいお酒を造っておられます。
白井
私は大学卒業後に研究活動と就職で数年間海外で暮らしていたのですが、日本食が恋しくなると食品と一緒に日本酒を送ってもらって、食事をしながら一緒に楽しんでいました。海外にいると逆にその良さを強く実感します。食と酒は大切な文化ですね。
グローバルな視野で
広島の地元の良さを世界へ
広島の地元の良さを世界へ
前田
焼酎もウイスキーやジンも同じ蒸留酒なので、製造方法の基本は同じなのでしょうね。
白井
ええ、しかし造り方だけでなくウイスキーのビジネスとはどういうものなのか実際に現地へ行って学ばねばと思い、海外の蒸留所を何箇所も回りました。スコットランドでは2週間、毎日ウイスキーを利き酒して。
前田
それはうらやましい(笑)。
白井
終盤はさすがにグロッキー気味でした(笑)。蒸留器まで見せてもらい、いろいろ話を聞いて学びを積み重ねた上で、最終的にわれわれがウイスキー造りをやる意味があると確信し、決断しました。
前田
それはどういったことですか。
白井
中小企業なので、量で勝負することは難しい。地方の良さを生かして、お客さんが価値を認めてくれるようなものを造らないといけない。自分たちなら広島の良さを生かした酒造りができると。
前田
なるほど。社名の「サクラオ」も、製品の「戸河内」も地名ですよね。そういえば御社の前社名は中国醸造でしたが、社名を変えるのは大きな決断だと思います。
白井
活動範囲が中国地方から全国、海外へと広がって来たことがひとつ。グローバルな時代だからこそ、会社が立つこの桜尾の地から世界へ、という思いを込めて名付けました。
広島の持つ豊かな魅力
環境がウイスキーを育てる
環境がウイスキーを育てる
前田
御社にはこの桜尾の貯蔵庫のほかに、戸河内にも貯蔵庫があるのですね。
白井
はい、戸河内の方は廃線となった可部線のトンネルを活用しています。ウイスキーの個性は8割が樽での熟成で造られるといわれます。樽は湿度や温度で膨張収縮する、いわば“呼吸”しています。海沿いの桜尾と山間部の戸河内では気温や湿度の変化が違うので、それぞれが違った味わいになります。ウイスキーは環境が育てるといっていいでしょう。
前田
社長のお話を伺っていると広島への思いを強く感じます。
白井
広島らしさを強みにしなくては、といろいろ調べたんです。広島というと牡蠣とか、海のイメージに目が行きがちなのですが、山へ目を向けると広島の“わさび”は全国の値段を左右するくらいの名産地なんですね。広島は海も山も島も、非常に環境が豊かで魅力的な土地だということに改めて気が付きました。柑橘類やわさびなどを使って個性を出したジンが、SAKURAO GINです。
前田
われわれも広島を元気にするという思いで活動しています。住まいについては何か思いはおありでしょうか。
白井
貯蔵庫を建てるときも環境が生きるような貯蔵庫を作ることを意識します。住まいもその環境が生きるような、その土地に応じた住まいがいいなと思いますね。
前田
私たちも「いい環境はいい人をつくる」という思いで活動しています。酒造りと一緒ですね。最後に今後の展望をお聞かせいただけますか。
白井
われわれならではの酒造りをしていきたいです。地域と和の文化を大切に、日本酒の樽で熟成したウイスキーとか、逆にワイン樽で熟成した日本酒なども試みています。ウイスキーマニアの方々が世界中から見学に来られるので、そうした皆さんを受け入れて説明する場もますます充実させていきたいですね。
前田
私も先ほど見学させていただいて大変勉強になりました。今夜はいっそうおいしいお酒が楽しめそうです(笑)。今日はありがとうございました。
株式会社
サクラオブルワリーアンドディスティラリー
代表取締役社長
サクラオブルワリーアンドディスティラリー
代表取締役社長
白井 浩一郎
1978年広島県生まれ。青山学院大学卒業後、アメリカの大学院で研究を続け現地で就職。2007年に帰国、中国醸造入社。2009年代表取締役社長就任。プライベートでは3児の父であり、お酒は種類を問わず好き。