株式会社ネストロジスティクス 代表取締役 迫 慎二

家具を中心に家電、自動車部品、
引っ越しに伴う運送事業などを手がける
株式会社ネストロジスティクス。
運送事業の枠を超え、
フード事業までも展開する
同社の迫社長が語る物流の将来と、
今後目指す意外な企業像とは。
「ものを運ぶ企業」に留まらず
「社会の役に立つ企業」へ
前田
御社の会社概要を教えていただけますでしょうか。
法人化して52期目、陸上貨物の総合物流会社です。家具を中心に運び、一般の消費者の方とは、引っ越しや模様替えなどの際の輸送やコンテナボックスへの保管などで接点が多いですね。全体の9割が法人契約によるもので、保管倉庫と流通型倉庫を兼ねたクロスドック、あるいはスルードックといわれる3PL事業があります。簡単に言えば、“入ったらすぐ出る”。海外製品や国内製品を運んできて、その製品を店舗ごとに仕分けをし、まとめた荷物をすぐに配送します。3000坪超の倉庫が週末には空っぽになり、月曜の朝からまた荷物の出し入れが始まり・・・と。倉庫がフル回転していきます。お店に商品が並ぶのもこうした物流が機能しているからであり、通販会社などで配達される商品も、そのような物流センターがあるからネットで注文して翌日に届いたりするわけです。どこに拠点を構えてどれくらいの物がさばけるかということが、常にわれわれの課題です。
前田
現在のところ、全国で18カ所の拠点があるのですね。
先月札幌に新たに拠点を構え、現時点で20カ所になりました。将来は47都道府県全てに拠点を構えることを目指しています。現在、北は札幌から南は熊本まで展開。広島は大小さまざまな島が多いのですが、いずれはドローンで物を運ぶ時代になるでしょうね。途中まではトラックで運び、そこから過疎地や山間部などへドローンで運ぶということも考えられます。当社では「運ぶ」ということが事業の主力ですが、「ものを運んで社会の役に立ちます」ということだけでは機械に取って代わられてしまい、5年後10年後には立ちゆかなくなるかもしれません。当社が主力とする業務のカテゴリーそのものがなくなるかもしれないという危機感から、「もっと社会の役に立つことをしよう」「生活の中で求められているものを提供しよう」ということを常に考えるようにしています。
仕事も待遇も魅力的な
働きがいのある企業を目指す
前田
ドライバー不足で、人材確保が難しいということをよく耳にします。御社は拠点数が増えているという現状において、どのように対処されているのでしょうか。
ドライバー不足は今に始まったことではないし、成長している企業はどの業種でも今は人手不足です。私も30数年この業界にいますが、人手に困らなかった時代はありません。そのため、仕事が魅力的で、福利厚生や待遇が多少なりとも良く、夢ややりがいがあって働きがいのある会社になろうということを常に目指しています。もっと言えば、同業他社で働いていたドライバーよりも、むしろ異業種で働いていた人に魅力を感じて入社してもらえるくらいになりたいと思うのです。
前田
当社でも一時家具を扱っていたことがありました。お客様の家への運搬や設置をしてもらう目的で御社に依頼したことがあります。創業当時から運送業務一筋だったのですか?
当社は当初、家具と綿を運んでいました。広島には昔から綿屋さんが多く、海外から輸入した原綿を広島に持ち帰り、それを精綿して布団綿や脱脂綿などにして出荷していたのです。私が入社した当時は婚礼家具の運搬も多かったのですが、今や家具も造り付けが多くなりました。嫁入り道具だった和ダンスは着物を着る人が減ってほとんど必要とされなくなり、ドレッサーは洗面台に、食器棚や水屋はシステムキッチンに代わり…。布団に使う綿は羽毛に代わり、生活様式の変化で綿が入る座布団も要らなくなり、かつて当社が運んでいたものはことごとく生活の中から消えていきました。
前田
家具や綿の業界が縮小しつつも、御社は業績を伸ばされていますが、何か分岐点はありましたか?
1番大きいのは人財が育ったことですね。地道に人財育成をしながら、いろいろな可能性にチャレンジしようという企業文化が根付いてきたことでしょうか。社員からの提案があれば、「やってみようよ」という姿勢で挑戦します。利益が出るのかどうかは二の次です。
社員の発想による新規事業は
今や1番の主力事業に成長
前田
社員さんから出たアイデアで、実際に事業化されたことはありますか?
家具は、売れたときに運ぶだけではなく、子どもが生まれたら新しくベビーベッドなどを置くために動かす必要が出てきます。大半は自分で動かしますが、1階の家具を2階に上げたりするのは大変な作業。タンスを買うのは一生に数回でも、家具の移動を含む模様替えはそれ以上に可能性があります。「それならば、模様替えを当社の商品にしよう」というアイデアは社員から出たものなのです。先ほどのスルードック型の倉庫も、実は社員による発想でした。「関東で、3000坪の敷地でやりたいんです!」と事業計画を熱く語られたら、もうあとはこちらで金策に走るしかなくて(笑)。それが今や、当社の事業の1番の主力になってくれています。
前田
御社の隣にあるフード事業部のカフェレストラン「みんなの巣」や、たこ焼き店の運営などもされていますね。
「自分たちで運ぶものを自分たちで作りたい」という思いが出発点です。商品開発、仕入れ、製造を自分たちで行い、流通させようと。社名にある「ロジスティクス」とは、物資の輸送戦略であり、物流に必要なものを自ら作り出すこともその一環です。どんなものをどう作ってどうすれば売れるかをみんなで考えようというのが今の課題ですね。もう物流だけを手掛けているわけではないので、当社のなりわいを聞かれれば、「世の中の役に立つことなら何でも」というところでしょうか。そうすると可能性は無限なので、ロジスティクスという言葉を社名から外してもいいと思うくらいです。
前田
最後に今後のビジョンをお聞かせください。
そうですね……今期の方針としては「日本一楽しい会社にしたい」と掲げているところです(笑)。
株式会社ネストロジスティクス
代表取締役
迫 慎二
1964年に創業、1968年に法人化し、「上村運送有限会社」を設立。1995年に「株式会社ネストロジスティクス」に組織変更。1996年から代表取締役を務める。家具、家電、自動車部品、引っ越しに伴う運送事業を中心に手掛け、全国20カ所に拠点を構える。