理研産業株式会社 代表取締役社長 久保田 勝彦 

情報通信技術サービスやオフィス機器を通じて、
働きやすい快適な環境を創造する理研産業。
久保田社長と前田社長がさぐる、
これからのオフィスの在り方とは。
感光紙販売から始まり
ICTソリューションまで
前田
こちらのオフィスはナチュラルでリラックスできる空間ですね。弊社のショールームもそうなのですが、こちらもスギの足場板を床材に使われているんですね。
久保田
お客様がお見えになると、オフィスらしくないとよく驚かれます。木を使うことがSDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)へ結びつくと共感していただけます。自社のオフィスがショールームとしても機能しているんですよ。
前田
理研産業さんはICTコンサルタントやオフィス設計も手掛けておられますが、詳しくお聞かせいただけますか。
久保田
弊社は私の祖父が1939年に創業し、中国地方5県に感光紙を卸すことからスタートしました。まだコピー機がない時代にトレースを行い、その後青焼き印刷、デジタル印刷、ワープロというように、オフィス機器の変遷と共に事業も成長し、機器からオフィス家具などのファシリティも扱うようになりました。
前田
コピー機や事務機器の販売にとどまらず、ソリューション営業やコンサルティング営業もされていますね。
久保田
一番力を入れているのが、当社のお客様である広島の企業、特に中小企業のDX(デジタル変容)です。デジタル化を一緒につくり上げていく、協力し伴走するというスタイルです。例えば、「顧客管理はどうされていますか?」とうかがうと、紙の書類だったり営業担当者の頭の中やノートだったりと、会社の資産になっていなかったりするんです。それをデジタル化して利益貢献につなげるということに協力しています。
前田
私どももこの2年くらいDXに取り組んでいます。今まで職人さんが電話とファクスでやっていたことをクラウド化しようとか、紙のアンケートをデジタル化しようとしていますが、その次のステップに進んでいかねばなりません。プロセスの“見える化”が必要です。
久保田
イメージを絵やフローに落とし込んでいく作業が一番大切だと思うのですが、それができる人材が少ない。弊社はそのサポーターとして伴走しています。
回り道をした後に
家業を継ぐことを決意
前田
御社はお祖父様が創業されたようですが、久保田社長も最初から会社を継ごうとお考えだったのですか?
久保田
高校時代、進路について父に相談すると「お前の好きなようにしろ」と。それで石川県の大学の土木工学科に入学しました。卒業後、福井県の土木資材メーカーに入り、7年間勤務しました。
前田
広島に戻られたのは、帰ってきて継いでほしいと言われたからですか?
久保田
父は最後まで帰って来ることに反対していたんですよ。“お前が考えるほど甘くないぞ”と、コンコンと説教されました。当時、勤務する会社の仕事もおもしろいし、上司や仲間にも恵まれてとてもいい環境だったんですが、尊敬する先輩のひと言にハッとしました。「君は家業をちゃんと理解した上で、帰らないと決めているのか、それとも理解もせずにただ帰らないと強がっているだけなのか」と。確かに、理解しようとしていなかったと気付き、父と先代社長と話をし、帰って経営に挑戦しようと決意しました。いろいろとありましたが、最終的には父親以外は全員認めてくれて、なんとか帰ってきました。今は、あのとき“甘くないぞ”と言った父の言葉を、年々実感しています。
イノベーションはオフィスでの
対話から生まれる
前田
今、働き方改革が叫ばれています。働きがいがあるということと、働きやすいということ、この両方が会社には必要ではないかと思いますが、それにはオフィスがとても重要です。人生の大半は仕事をしているという人がいる中、働きやすいオフィスが働きがいのある人生につながると思います。
久保田
昔は、コミュニケーションをとりやすい、皆が集いやすいオフィスがいいと言われていましたが、テレワークやフリーアドレスのような、働く場所を選ばないという概念が先行し、オフィスの在り方が変わってきています。オフィスはコミュニケーションの先にある、イノベーションを生み出す場かと思います。「やあ、元気?」みたいな、オフィスでのちょっとしたやり取りが全くない状態だと、なかなかアイデアが生まれにくいようです。
前田
去年テレワークが進んで生産性が落ちたという話も聞きました。確かに目の前の作業ははかどるのですが、それでは新しいものが生まれない。
久保田
そういう意味では、オフィスというものは必要だと思います。オフィス縮小や不要論もありますが、成果主義だとギスギスしてくるのではないか。潤滑油という意味でもオフィスは必要なものではないでしょうか。また、自宅とオフィスの融合もありだと思います。
前田
自宅っぽいオフィス、オフィスっぽい自宅というのも出てきていますね。テレワークスペースの需要もコロナ前からありましたが、一気に増えました。家の中で複数人がテレワークやオンライン授業を受けるため部屋を仕切る必要があるんです。
久保田
オフィスの個室スペースは従来はコミュニケーションを阻害するだけと思われていましたが、集中するためには必要という認識に変わりました。その上でリラックス空間としての交流スペースもなくてはならない。バランスですね。
前田
「広島を、いい笑顔に」がこの対談のテーマなのですが、広島をこういうふうにしたいという思いはありますか。
久保田
1つは昨年から注力している、地元の企業と一緒にものづくりができるICT商社でありたいということ。お互いにアイデアを交換することで活性化につながると思います。もう1つは、領域外のニーズにも応えていきたいです。昨年マエダハウジングさんと一緒に行った人材採用イベントのような、広島に帰ろうと考える人のための場をつくりたいです。
理研産業株式会社
久保田 勝彦
1977年広島生まれ。金沢工業大学大学院卒業後、メーカー勤務を経て理研産業に入社。2014年に代表取締役社長就任。趣味は登山で、休日は武田山や絵下山など広島近郊の山々を楽しんでいる。